低炭素社会は「まちづくり」「いえづくり」
連休、いかがお過ごしでしょうか。
感染症対策を施しながらの運動会や、打ち上げ場所非公開の花火大会など、工夫しながらの行事開催の秋となっています。
9月議会では、
・低炭素社会に向けての取組みについて
・原子力災害への備えについて
この2点で、取組みの強化を求めました。
低炭素社会の取組みについて報告していきます。
私たちは、経済の発展のために自然環境を破壊し続けてきた結果、これまでは「公害」といわれる難病や体調異常を生じてきました。近年では、地球そのものの異変が目に見えて分かるようになってきました。その一つが「気候危機」です。
ちょうど1年前、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんの国連の温暖化サミットでの演説が話題になりましたが、覚えておいででしょうか。
「私たちは、大量絶滅の始まりにいるのです。
なのに、あなた方が話すことは、お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり。」
唐津市の「再生可能エネルギー総合計画」は、「産業・ビジネス」に分類されています。経済活動は必要ですが、産業・ビジネスに傾倒して「気候危機」に陥ってきた過去の轍を踏むわけにはいきません。そうしたことから、「低炭素社会に向けての取組み」としました。
地球=人間生活と生物多様性 を守るための今回の提案
① ZEH(ゼッチ)の促進
② 家電の買い替え促進
③ 営農型発電の普及
④ 適切な開発行為
⑤ 気候非常事態宣言 について以下に記載します。
①ZEH(ゼッチ)とは
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス
「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」
Question 唐津市でもビルダー一覧に事業者が見つかるが市内の取組み状況や、公共施設での高断熱・高効率設備や再生可能エネルギーの導入は
分かったこと⇒ 現状では事業者や市民の取り組み状況には、目が向けられていない。気候変動対策において評価されるべき取組みと、その効果が分からない。
公共施設では第一中学校、浜玉中学校、大志小学校、佐志公民館、鏡山小学校(建設中)、および新庁舎(これから建設)に太陽光パネルを設置(予定)。高断熱については言及なし。
② 家庭で一番、電力を消費しているものの一つは冷蔵庫。「市内で一番古い冷蔵庫を探せ!」という企画を行い、現役の一番古い冷蔵庫に輝くと、新しい冷蔵庫がプレゼントされる(企業協賛)事業を行っている自治体(所管は「環境部 地域エネルギー課」)もあり、授賞式はエコ家事のトークショーと同時開催で意識・知識の普及を図るもの。
また、電気温水器をエコキュートなどの高効率システムに変えるために補助金を設けている例も。電気の消費量は3分の1~4分の1と激減する。
Question 唐津市でも、効果的な事業展開として検討にあがったことはあるのか(「唐津市再生可能エネルギーの導入等による低炭素社会 づくりの推進に関する条例」第10条による)
分かったこと⇒ 庁内で検討したことはない。検討はしていきたい(未定)。
③ 営農型発電(ソーラーシェアリングなど)では、米・麦・芋・ブルーベリー・トマトの栽培と発電を行う事例について、事業者からのお知らせや、実践者の経験交流(主にネット会議システムによるもの)が増えている。新型コロナウイルス禍では、農作物の販売に行き詰まるときも売電収入があって「助かった」との声も聞く。
(台風でも大丈夫だったそうです。パネルの角度を、いつでも手動で変えられるのだとか。太陽の動きに合わせて動くパネルもあります。営農型発電で、地域コミュニティや国土を守れるとの想いで、農業に新規参入された人もいます。6次産業化して、大学生なども巻き込んでらっしゃいます。最近は、執筆や講師依頼が増えてこられたようです。)営農型発電であれば新たな開拓は不要な上に、食料と電力を自給できる。
Question 営農型発電の技術向上、対象作物と実践例の拡大の流れをつかんでいるのか
分かったこと⇒ 「情報収集に努めている。庁内での横断的な情報共有は重要と考える」に留まる。具体例が出てこない。また、答弁者が農林水産部長ではなく、政策部長。
④ 適切な開発行為。「適切」かどうかを判断するためには、幾分、専門的な知識や経験が必要です。洋上風力も、陸上風力も、水力も。まして、わざわざはげ山を作ってメガソーラーを設置するのはもっての外との認識は広がってきました。
唐津市は、山間部にも風力発電の建設計画がありますが、それは新たに山を切り拓くものです。「林道」になるのか分かりませんが、管理責任の所在によっては、管理や土砂崩れなどの災害復旧は公費で行い、発電の利益は市外の企業へ、、、という、「経済の域外流出」の構図は変わりません。気候危機に関心を向ける地方議員の全国ネットワークで、はっきりと問題視されるようになりました。また、巨大な風力発電機が連なることで渡り鳥への影響なども考えられます。
唐津市には「環境審議会」が設置されていますが、基本は5年に1回「唐津市環境基本計画」の策定にあたり、意見を聞くために開かれるのみです。環境に重きを置いた経済活動へと転換しなければ、私たちは後の世代に重荷を残します。「過去の轍」を知りながら見ないふりをすれば、気候危機を予測できずに開発をしてきた世代よりも、私たちの世代は悪質といえます。
Question 審議会の運営を見直し、今回でいえば、風力発電にかかる開発・開拓事業だけれども、こうした具体的事案について開かれた場で意見を出してもらい、住民や市の検討に役立てるような柔軟な運営にできないのか。
分かったこと⇒ この提案に、市が戸惑っているようだということ。
推測されること⇒ 以前、洋上風力の環境配慮書についても、その縦覧場所の設定の仕方に問題意識を発しました。
事業者が唐津市民を軽んじられるのは、市が市民よりも事業者側に立っている、または、開発行為への無関心が事業者にとって都合がいいということが考えられます。
審議会の運営については、初めて行われたであろう提案ですが、きちんと向き合ってもらえるよう引き続き注意を向けます。また、この提案を実現する場合、審議会の委員構成にも見直しの必要が生じるはずです。時間がないのですが、前向きに考えても少々 時間を要する現実が胸に沈んでいます。
⑤ こうした市の体制・取組みを知っていたので、全国の事例から考えても気候非常事態宣言を求めても「検討」に終わるであろうと思い、研究を続けていたところ、行政の側から宣言への言及があったのが、3月議会のことでした。
そこで、少し具体的に確認を行ったわけですが、残念ながら、これまでの私の認識は間違っていなかったようです。
考えられる課題⇒ 低炭素社会に向けての知識・省庁の動き・事業者の動きを、把握し、活用を促進することを使命とした組織形態がない。再生可能エネルギーの推進に関して必要な事項について協議を行うとして、平成28年に「地域エネルギー推進戦略会議」が設置されているが、広範囲に及ぶエネルギー関連の動きを活かすには不十分とみられる。
自然環境や国土保全に軸足を置くエネルギー関連施策は、エコツーリズムや就農、環境配慮のある企業や技術が育つ街となることであり、世界的にも価値あるまちづくりとして唐津の強み・魅力となり得ますが、全国に普及して「今頃ですか」と言われるようになってからでは、逆に弱みになります。
ただ「環境を守れ」と言っている訳ではないことを、議場だけでは十分に伝えきれていない気がすることが反省点として残りました。