大型風力発電開発事業 七山での説明会はなんだったか
1月22日 七山公民館にて、背振北山県立自然公園内に開発計画の大型風力発電「DREAM Wind佐賀唐津風力発電事業」の住民説明会が行われました。
縦覧期間は1月14日から2月15日までです。意見書は3月1日が提出期限です。
18時半に始まった説明会は、住民から多数の質問・意見があり、21時13分まで続きました。
既に七山を歩いて回って、事業について周知された方からは「事業を知らない住民が多い。説明会もネット配信するなど、会場に来なくても聞けるようにすべき。いいことをしていると言うなら、胸を張って周知したらどうなのか」と。ピープル放送で放映することだって出来るのではないでしょうか。事業者がしなくても、許されるなら個人でも配信可能です。
これについて、事業者はゼロ回答だったと記憶しています。
今回の開発は、市内でこれまで行われてきた開発とは違います。
県内に面積にして約11%しかない「自然公園」に計画され、「土砂流出防備保安林」でもある山林を伐採すること。(法律、条例、景観計画と整合しない)
その下流域にある土砂災害に影響しかねないこと。(七山小中学校がある地域)
さらに下流域にある浸水災害に影響しかねないこと。(浜玉地域)
住民生活、まちづくり、防災・復旧費など、住民の安全と 将来に渡る災害対策費の負担や、新しく造成される道路は「市道」になるのでしょうから その維持管理費。どれをとっても、自然にも市民にも負担をかけ、それでも「ここである必要がある」という説明がありません。
参加者からの質問に「これから調査をおこなう」と答えるばかりですが、自然公園であることと、災害の実績をみれば、調査を行うまでもなく候補地にふさわしくないと考えるのが妥当です。過去3年間、七山地域だけで 以下の件数の災害復旧を行っています。
農地、農業用施設災害 復旧箇所 300件(市内最多)
林道復旧箇所 18件
道路、河川復旧箇所 83件(市内最多)
令和元年8月豪雨
農地、農業用施設災害 復旧箇所 16件
林道復旧箇所 64件
道路、河川復旧箇所 9件
令和2年6・7月梅雨前線豪雨
農地、農業用施設災害 復旧箇所 13件
林道復旧箇所 29件(市内最多)
道路、河川復旧箇所 49件(市内最多)
例年、9月議会は、災害復旧費だけで億単位の補正がかかります。
住民生活への影響はもちろんのこと、災害のたびに市職員さん達が連日 深夜まで復旧工事に必要な業務にあたられています。
『環境影響評価法に基づき、事業の実施前に環境への影響を評価し、その結果を踏まえて影響をより小さくするための対策を講じていく手続き』⇒ 環境影響評価 との説明が資料にありますが、「より小さく」ではなく現状を改善こそすれ、悪化させることは 僅かであってもやってはならないのです。
法律は、最低でもクリアすべきことを定めているのであって、法律に定められている手順を踏んだからといって 現状を無視していい訳ではありません。
大和エネルギー株式会社の説明は、どれも七山を「点」で捉えた説明で、環境影響評価の項目も
- 騒音振動(工事中)
- 騒音超低周波音(施設の稼働)
- 風車の影(施設の稼働)
- 水質(工事中)
- 動物 植物 生態系
- 景観(施設の稼働)
- 人と自然との触れ合いの活動の場
- 廃棄物残土(工事中)
となっており、伐採面積や森林の保水力への影響、川へ短時間に流入する水量への影響、下流域への影響など「面」での捉え方がありません。
また、再生可能エネルギーだから自然に優しいかと言えばそうでもなく、使用後の廃棄方法まで含めて「持続可能」なのかも考えるべき点です。
この説明会が何だったか。
自然と調和して暮らすことや、七山・脊振山系を大切に思う人たちがいることが よく分かる場でした。再生可能エネルギーを進めることに賛成しても、この事業は、人と自然にとって「持続可能」とは思えません。
誰に利があるのか。輸出元の海外資本と、大和グループが一時の利益を上げるだけです。
ところで、1月10日に糸島で行われた配布資料のままかと思ったら、1ページ消えています。「垂直視野角」という用語を補足するための写真・図のページで、事業内容そのものではありませんが、なぜ なくなったのでしょうね。
事業にかかる縦覧では、オンラインで縦覧資料を見ることは出来ても、意見を出すためには 意見書のフォーマットを印刷し、指定の場所にて提出するか 郵送しなければいけません。
なぜ、オンラインで意見の提出まで出来るようにしないのかとの質問が10日の時点で上がっていましたが、あれから12日が経っているのに「本社に伝えている」との回答でした。オンラインで意見を受ける技術がない訳ではありません。いつでも切り替えられるのではないでしょうか、、、リンクを貼ったページは、記入項目から事業を依頼したい会社向けの窓口と思われます。そちらにはオンラインの窓口があるのに、なぜ 私たちにはないのでしょう。
「配慮書」や「方法書」という難しい資料以前に、工事や稼働後に影響を受ける人たちを遠ざけようとしている企業に 脊振山系とその周辺・下流域に暮らす人たちの生活に悪影響を及ぼす恐れのある大規模開発を任せるわけにいかないでしょう。