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新エネと環境と産業と

佐賀県唐津市

いま、海に陸に大型風力発電の開発がなされようとしている地域です。

 

まず、現在「(仮称)佐賀県唐津市沖洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」の縦覧中である洋上風力発電。馬渡島周辺海域に最大75基の洋上風力発電機が建設されるかもしれない提案です。

www.city.karatsu.lg.jp

www.acacia-renewables.com

www.osakagas.co.jp

 

19日、呼子公民館にて説明会が行われました。告知は県のHPにて行われています。

www.pref.saga.lg.jp

約40名の方が足を運ばれていました。質疑応答では漁業への影響や事故・安全性への質問が挙がりました。

この間、資料をもって参加していない市民の方と意見交換をしてきました。

まず、「漁業者が了解すれば済む話なのか」という点があります。確かに漁業への影響について慎重であることは必要ですが、同時に地球環境に対してどうなのかという視点が必要です。

これまでも日本の産業・開発は、環境保全・倫理的視点が脇に置かれてきました。原子力発電が分かりやすい例です。ヨーロッパは原子力の利用についての議論に倫理的視点からの意見も尊重していました。洋上風力発電に取り組む佐賀県の研究会「J SCRUM」(ジェイ・スクラム)も産業・金融が主な会員です。洋上風力に反対する訳ではなく、反対も賛成も、現状ではできない状態と受け止めています。

 

漁業者さんから質疑があった「台風への強度」については、台湾沿岸で稼働して大丈夫ならば、大丈夫だろうと思います。昔、台湾のすぐ傍の与那国島にいたことがあります。台風は本土の比ではありませんでした。あの威力に耐えているなら、唐津にくる程度の台風は問題にはなりません。

 

この開発計画は、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」という法によっています。その中で『(関係地方公共団体の責務)第五条 関係地方公共団体は、基本理念にのっとり、前条に規定する国の施策に協力して、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する施策を推進するよう努めなければならない。』となっています。法律上、国が地方自治体に求めているのは、これが全てです。

 

19日の説明会で、不十分だったとみているのは、漁業者に「法定協議会」への参加に理解を求めるとき、その協議会で詳細な調査・検討を行ったときに、その内容を踏まえて「この海域では採算がとれるほどの設置は難しいのではないか」つまり、計画の大幅な見直しも有りうるのかなど、「法定協議会の先の選択肢」をはっきり示さなかったことです。

説明で示された海外の前例は、水深が違います。馬渡島近海の方がずっと深いのです。また、地震のリスクも違うでしょう。唐津南海トラフ地震を想定しても、全国屈指の小規模被害地域であることは私も意識していますし、日本全体にとって「要」となるかもしれない地域だと考えています。

その地域の強靭化を進めることは理解できますし、技術者を育てたいというのも分かります。では、何を危惧するのかというと、推計される経済効果が10兆円規模であり、「何がなんでも開発をする」という流れになれば、クリーンエネルギーのはずが、建設過程で大量の二酸化炭素を出し環境にダメージを与えた上、期待した成果にならなかった。しかし、実はその可能性も分かっていた、、、という事態になって欲しくないということです。

地球にとって何も保全にならなくとも、仕事は生まれ経済は振興するのは事実です。

説明会で、説明をされていた大学教授も事業者も、そこまでの責任は負いません。法も求めていません。「当時は想定できなかった」といえば済みます。

協議会には、進んで環境保全の専門家と、長年 玄界灘を観察・記録してきた人間をいれるべきです。その人たちの意見は、経済界の意見より尊重されるべきです。

 

とても残念な話にも触れなければいけません。洋上風力発電の開発に関わらず、玄界灘の生態系は変わってきています。海藻の種類(温帯から亜熱帯へ)が変わり、カクレクマノミが越冬し産卵するようになりました。海流も変化しているようです。洋上風力発電に関係なく、これまでと同じ漁業を続けるのは難しいだろうと見込まれます。しかし、私は専門家ではありません。

後々、洋上風力発電が原因でこれまでの漁業ができなくなったなどの思いを、不要に抱えさせることがないよう、玄界灘の変化そのものを市民に広く知らせ、考えを共有していただきたいという想いです。

国策で住民が分断されるのは、もう嫌です。

 

洋上風力について、最後になりますが、唐津市の縦覧場所の少なさに疑問を感じます。市役所本庁の一か所ですが、カウンターの隅に置かれた環境配慮書を、立ちっぱなしで読まなければいけません。

長崎県では、離島や陸続きの支所・公民館にも手厚く置かれています。

アカシア・リニューアブルズ株式会社のHPからは環境配慮書を見られませんでした。唐津市民への配慮を長崎県と同じくらいには行っていただきたいと感じます。

赤枠で囲った辺りが、馬渡島海域で、赤い指が唐津市本庁です。唐津市では、この一か所のみです。

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縦覧可能な施設(赤い矢印が唐津市役所)


陸上風力発電では、七山の唐津市糸島市との境に10基ほどの風力発電の「計画段階環境配慮書」の縦覧が8月11日まで行われていました。

風力発電の建設だけでなく、建設するための山林開拓が必要になります。どれほどの伐採になるのか定かではありません。(画像赤枠が環境配慮書に示された予定エリアでした)

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ぎこちない線ですが、赤く囲った部分が建設計画エリア


コロナ禍において、新エネルギーや気候危機関連のセミナーのウェブ化が進みました。建築基準における省エネ・断熱構造の促進や、日本中に残っている「電気温水器」の「エコキュート」への買い替え促進(電気温水器はエコキュートの約4倍も電気を消費するといわれています)、地域分散・市民電力の促進など、地味ながら「全国どこでも出来る省エネ・再エネ」の普及を目指して学習・交流を続けています。